藤原八弥画伯の「みちのく」について~6

見えてきた光明(地元の方の親切に感謝)~2

平成16年8月7日 土曜日の午前9:00

私は北上市役所の駐車場で妻と12歳の長女8歳の次女と共に、ある人の到着を待っていた。

しばらくするとセダンタイプの車が市役所の駐車場に入ってきた。若干の白髪交じりの中肉中背の人柄の良さそうな中年の男性がおりてきた。私はすぐその人であると確信した。私から近づき「武田信玄さんですか?」と問うと、「渡辺さんですか?武田信玄です」と穏やかな笑顔で迎えてくださった。暫く立ち話の中で大まかないきさつをお話しさせていただいた。

何度か電話でやり取りをし、一生懸命私のパーソナルな思いに応えてくださった北上市役所の河野景子さんが奏でるメロディーと同じメロディーを聞いた。東京地方の人間はこういうメロディーを聞くとなぜか一気に心が開ける。

大まかな話を聞くと武田信玄さんが

「その絵がまだあるかどうかはわかりませんが、とりあえず藤原美術館にご案内しましょう。」という

「えっ!藤原美術館はまだあるんですか?」

「あるにはあるんですよ」

私は、武田信玄さんの車についてゆきながら、もう無くなった藤原美術館の移転先の別の藤原美術館を想像していた。

「もうほとんどの絵は、様々な人の手にわたり、残り少ない作品を展示しているのかもしれない」

あの絵が誰かのところにあったなら、相当にその人の心を揺り動かし、

「あなたにだったらお譲りしましょう」といってもらわなければならない。

私は車を運転しながら頭の中で、だれかわからない人を相手にし、絵を譲ってくださるといってもらえるよう説得する練習をしていた。

やっぱりハードルは高そうだ・・・・。

家族には、今回の旅行はとにかく「あの絵」をさがすことだけが目的なので、君たちにとっては面白くない旅行になるかもしれないと言っておいた。

車の中で、

「ここからあの絵を持っている人を何とか探し出すから、今日一日は全部パパに時間を頂戴ね」

「うんわかった」

それでも、子供たちは後ろの座席で楽しそうにはしゃいでいる。やっぱり子供は子供である。

つづく