藤原八弥画伯の「みちのく」について~2

「みちのく」との出会い  2

藤原美術館の中に入ると、様々な人物画、風景画が展示されていたが、「絵」というものを理解する能力など持ち合わせていない私は、若干退屈な気分を引きずりながら、順路に従い見学していた。途中案内役の方が、鬼面随一といわれる鬼剣舞の面(白面)を説明を加えながら見せてくださった。

「このお面は、面の中で一番優れた相をしているお面なんですよ」

確かに表情に奥深さがあったと記憶している。その順路のままある小部屋に入ると夕暮れの山間の農家の庭で鹿踊りを演じている風景画があった。

私はこの絵の前でいきなり時間が止まったのである。

藤原美術館に来る前に、二子鬼剣舞や金津流簗川の鹿踊りを取材し、地元の人々とのふれあいがあり、その帰りには本物の天の川に遭遇し、整理しきれない感動が胸に詰まっていた中でこの「みちのく」にであった。

「君の整理しきれない感動はこれでしょ?」といわれ、共感と共鳴を感じ、時間を忘れて共有した感動を熱く語り合うような時間が流れ、絵を前にして一人気分は高揚していた。

どのくらいの時間が経過したかは、全く覚えていないが、私はこの「みちのく」に

「必ずまた会おうね」「また会えるよね」と話しかけた。

「いいよ」「まってるよ」くらいの返事をしてくれたのではないかと思うが・・・・。

帰るとき

「もし自分が絵というものを買えるときが来たならば、必ず買わせていただこう」

私は、不思議な決意を込めて藤原美術館を後にした。

つづく