藤原八弥画伯の「みちのく」について~3

その2

長すぎた20年の時の経過

20年余の時が経過し、私は40歳を過ぎていた。夢にがむしゃらであった10代は遠い昔、諸事情から舞踊家の道を断念した私は、人生を全うするため食べていくために何をするかがむしゃらになった。20代はあっという間に過ぎ、30代半ばで司法書士試験に合格し、司法書士の道を歩むことになり36歳になる歳に所沢市に司法書士事務所を開業し自営業として生きてゆくことになった。

当然のことながら開業当初仕事はなく、家族を養っていけるかどうか不安な日々が続く。この道で生きていけるかどうか・・・。

時代がよかったからであろう、開業して1年余りが過ぎたときは、ありがたいことに多忙な日々を迎えることができ、事務所の運営は徐々に安定していった。開業して5年余りが経過した時、事務所は私がいなくても十分仕事が回るほど従業員の人たちも成長し、開業後初めて自分自身の夏休みをとれる状況を作ることができた。

そんな心の余裕が生まれたせいか、初めての夏休みの行き先を考えたとき、「あの人に会いに行きたい」という思いがふつふつとわいてきた。

「あの人」 それは20年前に再会を約束したあの人、「みちのく」

今年は、あの絵に会えるかもしれない。会いに行こう。20年余り前に感動を語り合ったあの絵。少年時代に田舎で遊んだあの無二の親友との再会、青春時代に実ることのなかった初恋のあの人との再会。

表現はいか様でもよい。胸は高鳴る。

私は久しぶりの家族旅行を計画した。行く先はもちろん岩手県北上市、「北上まつり」で演じられるあの素晴らしい、世界に冠たる芸能を妻や子供達にも見せたく、もし晴れていればあの本物の天の川も見せてあげられる。私はあの絵に会える。そして許していただければ買って帰ることもできる。

私は早速「北上まつり」に合わせ旅行の計画をし、宿をとった。

つづく